金融経済を読むエコノミーア

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岩崎有一 IWASAKI YUICHI

01
コートジボワール首都アビジャン


「アフリカの中でどこが一番好きな国ですか」


今もなお、アフリカは、とっても遠いところだと感じる。

いえ、アジアやヨーロッパと比べて、飛行機に乗っている時間が長いという話ではない。

「アフリカの中でどこが一番好きな国ですか」とよく聞かれる。

好きな国はいくつもあるが、中でもトーゴは特に肌があうため、私はまずこの国名を挙げることにしている。

しかし、トーゴが国名であることをご存じない方も少なくない。

他に、ブルキナファソという国もかなりのお気に入りなのだが、「ブルキナもいいところですよ」とこたえても、先方の目は点になるばかり。

私が目にしてきたアフリカの風景をお話しする際、「地理・アフリカ編」をまず展開する必要に迫られることは少なくない。

ちなみに、アフリカの首都ってどこでしたっけと、あるジャーナリストから聞かれたこともあった。



「危ない目に遭ったことは一度もない。」


「危ないんでしょう。」と眉をひそめられることも実に多い。

もちろん治安については日本と比べるまでもないが、アフリカ大陸全域で銃弾が飛び交っているわけではない。

現在、アフリカ大陸内で紛争・係争地域として危険な場所は片手の指の数で収まる程度。

また、あらゆる街が映画に出てくるゴーストタウンのような無法地帯であるわけでもない。

これまでに私はアフリカの26の国々を訪れてきたが、幸いにして危ない目に遭ったことは一度もない。



「ライオンとか襲ってきたりしないの?」


危ないばっかりでもないんですよとこたえると、次にやって来る言葉は、「飢餓」か「病気」のこと。

こちらについてもまた、そもそも大陸中で飢餓がおこっているわけでもなく、罹るやいなや死にいたる病気が蔓延しているわけでもなく。

のべ約3年にわたってアフリカの国々に滞在したが、私は今も五体満足でいる。

「ライオンとか襲ってきたりしないの?」
この類の質問も、少なくない。

ライオンや象やシマウマやキリンといった野生の王国の世界は、アフリカ広し言えど、極めて限定されている。

ケニアやタンザニアなどの国立公園にわざわざ行ってやっと、お目にかかることができる。日常で目にする動物は、犬・牛・鶏、ときどき猫。

こないだチーターにおっかけられてさぁ、なんて話は、私は一度も聞いたことがない。



「アフリカの風景ってなんなのさ」


恐ろしく危険なわけでもなく、そこそこ食べるものもあり、あまり綺麗ではないけれど、一応病院もあって、遠路はるばる向かっていけばライオンも見ることができるかもしれない大陸、63の国とひとつの未独立地域があり、気候も気温も言葉も通貨も様々な大陸が、アフリカである。

未開の地でも暗黒の地でもなければ、じゃあアフリカの風景ってなんなのさ、そう言わんばかりに口を尖らせられたこともしばしば。

そこを見たいがために、私はアフリカの地を訪れ続けている。アフリカにあるなにげない日常の風景を、伝えたいがために。

ここ、WASEDABOOKでは、そんなアフリカの国々における日常の風景の中から、経済やビジネスのエッセンスを少しだけ含んだコラムを連載していきます。



南アフリカ共和国より


この夏、南アフリカのワールドカップ開催地を見てまいります。

アフリカ大陸最南端に位置する南アフリカ共和国、今は冬です。
カバンには冬物のジャンパーが必須。
財布にはクレジットカードがあると安心便利な国。
スーパーでもガソリンスタンドでも駅でも本屋さんでも、クレジットカードが使えます。

それでは次回、南アフリカより連載をお届けいたします。

2009年夏



第2回 ヨハネスブルクの街角
第1回 コートジボワール首都アビジャン





岩崎有一 いわさきゆういち
ノンフィクションライター、武蔵大学メディア社会学科非常勤講師
アフリカ諸国26カ国を踏破、以降、2年に1度のペースで訪問する。